息するように文字を吐く

自営業のささやかな思考回路

こねくりまわして、こねくりまわして、ゴミをつくる

以前。クライアントで構成をしっかり練ってから、それに沿って取材し(クライアント同席)、原稿を作成したにもかかわらずだ。クライアント氏「なんか違う」と言いだし、こねくりまわして、こねくりまわして、最終的に最初の原稿に戻ったことがある。

宙に浮く言葉というのは、すぐわかる。言葉を重ねているのに、具体性がなくて、ただ単語を連ねただけの実のない発言。キックオフでそれを聞いて危険を察したため、個人で対峙してはダメだと感じ、チーム体制でそのクライアントと向かい合うことにした。自分ひとりの責任にならないように。結果正解だった。わがままをいうクライアント、それに対して「この金額ではやってられない」というチームメイト。赤字で尻拭いする自分。悲惨なカオスが生まれた。

初めて会って、初めて仕事する人が、「雰囲気で」「なんとなく」求めているモノを察するというのが出来るのがプロだ、という人もいるかも知れない。しかし、私たちは人間だ。夫婦間、友人間といった勝手知りたる仲であってもコミュニケーションが欠かせない。なのに初めて会った赤の他人の、見えていないゴールを、双方話し合いで作り上げて進んだにも関わらず、全て出来てから「なんとなく」違うと言われても、魔法使いではないので、これまで互いの会話で積み上げた積み木とその周辺でしかモノは作れないのだ。

これをみて、ああだから、この人は売れてないのかと思われるかも知れないな。しかし、コミュニケーションをさぼって、それでモノを作ってもらおうとする人は、モノをつくるなといいたい。プログラミングでもイラストでも写真でも。初めて会うならなおさら、丁寧に積み上げないと、こねくりまわして、こねくりまわして、最終的にみんなが不幸になる経験とゴミのような制作物が生まれてしまうのだ。

 

 

 

と、思ったのだけど、どうだろうか。

お客様は神様で、クライアントに商品を提供する人は魔法使い、というファンタジーで世界は出来ていないと思うのだけども。